「器物百年を経て、化かして精霊を得てより、人の心を誑かす。これを付喪神と号すと云へり」( The old tools change to a god after a long time. And they confuse people’s heart. They are called Tsukumogami. ) 森羅万象には八百万(やおよろず)の神が宿るとするアニミズム的な世界観「古神道」の精神があります。「付喪神(つくもがみ)」とは、年月を経た道具や家畜に宿るとされる神々のことで、人々に畏怖の念を抱かせ、モノを大切にする精神に立ち返らせてくれる存在です。そんな八百万の神が住みつく黄金の村が室町時代(16世紀)からひとひとり存在しない山奥にYOKAIの郷として伝承されてきました。21世紀の現代風景図ともいえる「付喪村」をぜひご堪能ください。
付喪神が人間に浸透したのは大量消費時代の平安時代に入ってからだといわれています。 製造技術が発達し新たな道具類が大量生産された陰で、これまで使われてきた道具類を廃棄し始めました。古いものには魂が宿り、粗末に扱うと化けるという信仰がある中、役目を終えて捨てられていく古道具たちは、擬人化された妖怪で寓喩(ぐうゆ)され、人々は恐れと共に 愛着をも抱いていたのではないでしょうか。 その廃棄された古道具を転売し始めたのが京都の北野天満宮の古道具市の起源とされています。人間によって捨てられた古道具に宿る付喪神たちが夜中に徒党を組んで行進する 「付喪神夜行」のコースが、現代の京都の「一条通り」であるといわれています。
「需要と供給が成り立つ一方、進まない自然保護への意識レベルの低下」これが外から見た黄金の国と言われるジパングの姿でした。樽屋タカシ村長は日本古来の伝承文化とそこに宿る精神に着目し、日本の輝かしい伝承文化である金箔を村の歴史に役立てようと立ち上がりました。人間の欲求によって大量の資源消費を繰り返してきた今、付喪神たちに学ぶものがあると思い、室町時代より絵師達が繰り返し模写してきた伝承を独自の視点と自然環境保護にまで配慮した技法で現代に蘇らせています。永きにわたり日本人に愛されてきた妖怪たちの奇々怪々な 魅力をエコロジーやリサイクルの重要性を訴えながら伝承していく所存です。
ひとひとり存在しないこの付喪村にはコミュニティの核になる「付喪村づくり条例」によりコンビニからガソリンスタンド、銀行まで存在します。役目を終えて人間に捨てられた街は次第に八百万の神が住みつき付喪神の故郷として繁栄。いつでもどこでもモノが手に入れられる今、ありふれた現代風景ですがそこには妖怪たちの元気な夜行図が繰り広げられています。付喪村を観光する際はぜひエコカーをご利用下さい。
COOL Magazine Inc. COOL Vol.20